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〈偶然〉という回路(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2017年度講義)
2017年度開講

〈偶然〉という回路(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2017年度講義)

 私たちは、偶然に取り囲まれ、偶然に振り回されて生きている――少なくともたいがいはそう思って生きています。一方、研究に求められる知性は、偶然性を排し、偶然に見える事柄の奥に隠された必然を見いだすことに求められる、としばしば言われます。では、偶然と知性は、まったく相容れないものなのでしょうか。 私たちが偶然と名づけているものが、予測不可能に見えるこの世の現実の手触りだとすれば、偶然とはどういうものかと目をこらすことは、知の営みを現実へと新たにつなぎ合わせることになりはしないでしょうか。たとえば、縁や運や宿命、あるいはたまたまの遭遇がもたらす喜怒哀楽といった、いかにも人間くさい事柄に学問的にアプローチしたらどうなるか、などということです。なにかと孤立して見える偶然を、むしろ現実のリアリティへと接近する回路にしたいという思いなのです。  本年度の朝日講座では、それぞれの学問分野や実業界を担う先生方から、「偶然とは何か、そこから何か見えてくるか」という観点にもとづいた講義を行っていただきます。

地球と社会の未来を拓く(学術俯瞰講義)
2017年度開講

地球と社会の未来を拓く(学術俯瞰講義)

コーディネータ:武内 和彦 ナビゲータ:松田 浩敬 2015年に国際連合が採択した持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成することは、国際社会に課せられた包括的で重要な課題である。人間活動が地球の限界を超えようとしているいま、いかに地球の許容範囲内で豊かな人間社会を築きあげていくのかが問われている。この学術俯瞰講義では、次世代を担う学生諸君と一緒に、世界、アジア、日本に注目しながら、社会・文化、教育、エネルギー、地域経済、健康などに焦点をあて、サステイナビリティ学の視点から、地球と地域の持続可能な未来を切り拓く長期的な道筋を考えていきたい。

工学とは (学術俯瞰講義)
2017年度開講

工学とは (学術俯瞰講義)

コーディネータ・ナビゲータ:北森武彦、光石 衛、小関敏彦 この講義は「工学とは?」の問いかけに始まり「工学とは」の答えに終わることを目標とする。どこの大学にも有り高校までに習うことのない「工学」とはいったいどのような学問なのか。学ぶ方も教える方もわかっていそうでそうでもない「工学」について、具体的な例から俯瞰してみよう。

数理手法IV
2017年度開講

数理手法IV

時間とともに変化する不確実な現象を記述し理解するには、確率過程論が重要な道具として用いられる。この講義では離散時間の確率過程に関しての講義を行う。 この講義では、数学的に厳密な議論は行わず、確率過程論(特にマルチンゲール)のアイデアを中心として直観を重視した講義を行う。特に前半では確率空間が有限集合である場合を取り扱う。測度論、積分論の知識は前提としない。

ビッグデータ時代の人工知能学と情報社会のあり方(学術俯瞰講義)
2016年度開講

ビッグデータ時代の人工知能学と情報社会のあり方(学術俯瞰講義)

コーディネータ: 坂井修一 ナビゲータ:   中島秀之 概要: 近年、人工知能が第三次ブームを迎えたと言われている。火付け役はシンギュラリティの議論(とその映画化)や、ディープラーニング(DL)の成功である。確かにアルファ碁がDLと強化学習を組み合わせた方式で囲碁の世界チャンピオンクラスに勝ったのは(コンピユータ囲碁の研究者にとっても)衝撃的であった。アルファ碁は豊富な棋譜から学んでいる。ビッグデータが容易に入手可能になった現在、DLはこれ以外にも様々な可能性を秘めている。 しかし一方で、DLは人工知能研究(AI)のホンの一部に過ぎない。AIでは従来パターン認識とシンボル処理が二大テーマとなってきた。DLはパターン認識技術として期待されているが、それをより高次の知的活動につなげる必要がある。そこには状況依存性の処理の問題など未解決の問題が山積みになっている。そしてまた、AIは情報技術(IT)の一部(先鋒)に過ぎない。AIはITとして社会に定着する前の非定型な分野を担当している。定式化され、実用化されればITと呼ばれる。例えば、30年前には文字認識はAIの分野であったが、現在では普通に使われている技術である。自動運転も、今でこそAI的要素が強いが、やがてITの一分野になるであろう。ビッグデータの扱いにおいても、現状では理論的に定式化され、アルゴリズムとして形式的に処理できる部分(IT)と、そうではなく中身(データの意味)を扱わねばならない部分(AI)とが混在している。 ITは社会の在り方を根本から大きく変える力を秘めているが、現在それが遍く認識されているわけではない。また、社会システムのデザインは技術だけでできるものではなく、善悪の議論も含めながら社会学や法学とともに歩むべきものである。人工知能・ビッグデータの本格活用時代を迎えて、このことの重要性は高まるばかりである。 そのような訳で、AIブームの今日、未来を見通して社会のあり方までを広く俯瞰しておくことは重要である。本講座ではAIを軸としてITとその社会応用について概観する。AIの全体像を研究の歴史を含めて俯瞰することから始め、ビッグデータの扱いや、ロボティクスなどの関連分野にも触れる。さらにシンギュラリティの議論を含むITの未来像について語り、ITの社会応用や法的問題へと発展させる。
講義一覧

人工知能とは何か ― 過去、現在、未来 ―

ロボット知能の生物的原理

第3回
身体性が生み出す知能 | 國吉 康夫
第4回
行動と認知の創発と発達 | 國吉 康夫

IoTの未来予想図 ~デジタルが経済・産業・社会・地方を変える~

ビッグデータの深層と潮流、スマートデータへ

第6回
ビッグデータの深層と潮流、スマートデータへ | 喜連川 優

ビッグデータ・AI時代の社会情報学

ディープラーニングの可能性

ビッグデータ・AI時代の情報法制

現代日本を考える (学術俯瞰講義)
2016年度開講

現代日本を考える (学術俯瞰講義)

コーディネータ・ナビゲータ:藤原帰一 私たちの多くは、いま日本に生きている。その日本という社会や国家をどのように考えればよいのか。幕末維新期や大戦直後のように、かつて諸外国との対比のなかで日本を考えるアプローチが広く行われた時代があった。だが学術の専門化が進むなか、日本研究そのものが独自の領域として立ち現れ、より焦点を絞った比較研究は広く行われる一方、諸外国との対比のなかで日本を考えるアプローチは衰えたように見える。東京大学では英語によって日本に関する基本的な知識を講義する国際総合日本学というコースを設けている。この学術俯瞰講義は、そのコース運営の経験をふまえ、対比のなかから日本を捉えることのできる第一級の研究者を集め、改めて比較の中から現代日本を考えることが目的である。

守るべきもの、変えるべきもの(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2016年度講義)
2016年度開講

守るべきもの、変えるべきもの(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2016年度講義)

学問でも実業の世界でも、あるいは日常生活においてさえ、変革、革新、改革という言葉がたびたび登場するようになりました。新しい発明や発見を生み出すために、絶えざる変革が必要なことはたしかです。他方で、変革や改革がある種の常套句となり、「改革疲れ」という現象が生じていることも見逃すことはできません。変革や改革が日常化するなか、「何を守るべきか、何を残すべきか」を議論することの重要性が高まっているといえるでしょう。革新と保守、前衛と古典、グローバルとローカル、進歩と共生、集中と多様性、といった様々な対立のバランスシートを見出す姿勢が、いまほど問われている時代はありません。  本年度の朝日講座では、第2期5年間のスタートとして、それぞれの学問分野や実業界を担う先生方から、「何を守るべきか、そのために何を変えるべきか」という観点にもとづいた講義を行っていただきます。「10年一昔、30年一世代」といいますが、それぞれの学問分野や対象について、少し先の未来を見据えたお話を伺います。

古典は語りかける (学術俯瞰講義)
2016年度開講

古典は語りかける (学術俯瞰講義)

コーディネータ 小島 毅 (文学部) ナビゲータ 谷口 洋 (教養学部)  古典は、社会が受け継いできた文化的遺産です。古典を学習する本来の目的が大学入試で高得点を獲得するためでないことは、言うまでもありません。高等教育を受ける者が具えるべき教養として、代表的な古典作品について、それらの時代背景や流布・受容の歴史を知ったうえで、自分で実際に繙いてみることは欠かせません。この講義では、西洋文明における古典として古代ギリシャの作品と、東アジア共通の伝統文化を構成する中国古典、および日本独自の古典作品について、総合的に俯瞰します。学問の専門化・細分化が進み、また高度に発達した情報社会のなかで先人たちの智慧が忘却されがちな現在、あらためて古典の普遍的な価値を認識してもらうことを目的とします。この授業を通じて、受講者各自が古典というものの重要性を再認識し、自学自習してくれるようになることを強く希望します。なお、授業では現代日本語訳を利用するなどして、語学的な基礎学力がなくても理解できるようにします。
講義一覧

古典は語りかける-ガイダンス

ギリシャの文学と哲学: 『オデュッセイア』を読む-「ヒュブリス! どっちが?」

ギリシャの文学と哲学:ソクラテスという「哲学者」の誕生

中国の文学と哲学:「屈原」とは何者か

中国の文学と哲学:論語を学ぶ、論語に学ぶ

日本の文学と哲学:『徒然草』の <貧> と <閑> の思想

日本の文学と哲学:漢文と和文の世界観

媒介/メディアのつくる世界(朝日講座「知の冒険―もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2015年度講義)
2015年度開講

媒介/メディアのつくる世界(朝日講座「知の冒険―もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2015年度講義)

媒介とか媒体などというと、ことの本質にあまり関わらない脇役のように思われそうです。たしかに、書物は書かれている内容が主人公であり、その媒体としての紙やインクなどは、そのために奉仕するだけのものに思われるかもしれません。しかし、媒介や媒体の方に焦点を合わせ、そちらの側からみてみることで、時には世界が全く違った見え方をしてくることすらあります。メディア論を筆頭に、近年様々な分野で進んでいる、そのような観点からの研究の一端に触れることは、われわれのものの見方そのものを根本から考え直すきっかけになることでしょう。

クールヘッド・ウォームハート-みえない社会をみるために(学術俯瞰講義)
2015年度開講

クールヘッド・ウォームハート-みえない社会をみるために(学術俯瞰講義)

コーディネータ・ナビゲータ 玄田 有史(社会科学研究所)  イギリスのケンブリッジ大学にアルフレッド・マーシャル (1842-1924) という学者がいました。マーシャルは経済学の発展に多いに貢献した人物ですが、1885年の教授就任講演での締めくくりの言葉がよく知られています。  「ケンブリッジが世界に送り出す人物は、冷静な頭脳と温かい心をもって、自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げよう」(伊藤宣広訳『経済学の現状』)。  この「冷静な頭脳と温かい心」(Cool Head but Warm Heart) という言葉は、今も経済学者のあるべき理想の姿といわれています。ただそれは経済学にとどまらず、社会のさまざまな問題を解明しようとするあらゆる学問領域に共通する姿勢でしょう。  では冷静さと温かさを持って、私たちはどのように社会の問題に立ち向かっていくべきなのでしょうか。社会の問題は、目にみえる問題もあれば、背景や解決策がすぐにはみえない問題もあります。みえない社会の問題は見逃されたまま、取り残されてきました。  しかし東京大学には、様々な社会の問題を発見し、その解決に向けて、日々学問的挑戦を続けているクールヘッド・ウォームハートな教員がたくさんいます。今回の学術俯瞰講義では、そんな教員の何名かに登場していただき、社会の問題との向き合い方について学びます。