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脳の科学-シナプスから人生の意味まで(学術俯瞰講義)
2015年度開講

脳の科学-シナプスから人生の意味まで(学術俯瞰講義)

コーディネータ 多羽田 哲也(分生研)、上田 泰己 (医学部) ナビゲータ   道上 達男(教養学部) 私たちが考えたり、昔を思い出したり、あるいは夢を見たりすることは、いうまでもなく脳の働きです。この時、脳の中の膨大な神経ネットワークで何が起こっているのでしょう。それを知るために、ヒトのみならず、サル、マウス、ラット、さらには線虫、ショウジョウバエといった様々なモデル動物が用いられ、これらを対象として、電気生理学、シナプスにある分子の働きを調べる生化学や細胞生物学、顕微鏡やfMRIを用いたイメージング、遺伝子改変動物、数理解析など、様々な手法を駆使した研究が行われています。このような多方面からのアプローチを、それぞれの専門家がわかりやすく紹介し、最後に、脳科学の進展が私たちの存在の理解にどのように寄与するか、科学哲学の立場から講義します。 脳は脳を知るでしょうか。 本講義シリーズの終わりには、脳の働きを細胞の情報伝達のレベルで理解するのはもうすぐ手が届く近未来のことだと、皆さんは楽観的になるでしょう。その研究に自分も身を投じてみたいと思うようになるかもしれません。私たちが生きている意味を理解する一助として、所属や専攻に関わらず駒場の全ての皆さんの聴講を歓迎します。

宇宙・物質・社会-物質の成り立ちから応用まで(学術俯瞰講義)
2015年度開講

宇宙・物質・社会-物質の成り立ちから応用まで(学術俯瞰講義)

コーディネータ 家 泰弘(物性研究所) ナビゲータ   福島 孝治(教養学部)  この学術俯瞰講義は、理科Ⅰ類の学生諸君はもちろんのこと、生命科学系や人文・社会科学系の学生諸君の受講も大いに歓迎し、期待します。  一連の講義で、自然界および現代社会における「物質」の諸相を俯瞰します。われわれが棲むこの宇宙がどのように始まり、物質がどのように創られたか。物質の性質(物性)がそのミクロな構成要素である原子や電子のふるまいからどのように生じるか。それらを解明するためにどのような先端的実験手法が用いられ、新たな概念が生み出されているか。そして持続可能な社会を営むためにどのような物質の機能がの利用されようとしているか。これらを、第一線の研究を行っている専門家たちによる講義を通じて俯瞰し、自然界の成り立ちや物質の諸相を理解するとともに、われわれが将来にわたって物質を賢く利用するための素養を身につけます。
講義一覧

総論、物質の科学史、現代社会の物質

宇宙と物質はどこから来たのか

素粒子研究の最前線-新しい素粒子像

宇宙の進化と惑星や生命を作るもの

物性科学はじめの三歩

ソフトマター -そのしなやかさの起源

放射能・放射線

超伝導、強相関、トポロジカル物質

コンピュータの中の物質

光る・覚える・駆動する-半導体の電子の凄技

第11回
光る・覚える・駆動する-半導体の電子の凄技 | 川﨑 雅司

人工光合成-太陽エネルギーから化学エネルギーへ

奇跡の物質-レアメタル

第13回
奇跡の物質-レアメタル | 岡部 徹

「地域」から世界を見ると?(学術俯瞰講義)
2015年度開講

「地域」から世界を見ると?(学術俯瞰講義)

コーディネータ 古田元夫(教養学部) ナビゲータ   谷垣真理子(教養学部)  陸から見れば、香港や沖縄は中国や日本の「辺境」としか感じられないかもしれません。しかし、海から見れば、香港も沖縄も東アジアと東南アジア、さらには世界を結ぶ一大ハブとしてうかびあがります。地域研究が対象とする地域は、かつての文明圏であったり、国家であったり、一国の中の地方であったり、その形は実に多様です。現在の世界では、グローバル化、地域統合が急速に進む一方で、ナショナリズムに代表される個性の主張も強まっています。問題の所在によっては、「地域」の枠組みをどのように設定するのか、けっして自明の理ではありません。言いかえれば、どのように地域を設定するのかによって、世界の見え方が変わってきます。今回の学術俯瞰講義では、多様な地域から見える多様な世界を取り上げます。

IT ASIA 2014 - Surviving Cancer in Asia
2014年度開講

IT ASIA 2014 - Surviving Cancer in Asia

Changes in the disease structure in a globalizing Asia are contributing to a rapid increase in cancer in the region. Cancer is a complex disease that is deeply related to various factors, including genetic predisposition, living environment and lifestyle customs. Cancer represents a grave and common challenge in Asia, where social structures are undergoing significant transformations in all aspects, including in the economy, social security and also in family relationships. What is more, the common challenge of cancer is revealing contemporary issues for society as a whole in Asia. Advances in medicine mean that the number of people surviving cancer in Asia is also increasing and this survivorship and the need for long-term treatment and care is impacting the welfare of patients and their families. Both medical and welfare policies cover areas in which it is not possible to make judgments on the basis of economic considerations alone, given the ethical dimensions of such policies. The countries of Asia are now facing a period of transition in their social structures as societies continue to age, and the very real issue of striking a balance between limited economic and social resources on the one hand and what is acceptable in ethical terms on the other hand is an extremely difficult one to address. Given the difficulties in controlling it cancer cannot be overcome based on global health-based logic, which has functioned to date in countermeasures against communicable diseases. Furthermore, as the economy globalizes the market for anti-cancer drugs is expanding rapidly. The status of drug development itself is an issue that encompasses complex and dynamic factors, with national interests at stake. As such, the structure as it currently stands is not one that can be readily resolved by referring to conventional theories of medical sociology. This lecture series will be held in an omnibus style, with external lecturers being invited to talk about cancer in Asia from their various expert perspectives. The lecturers will delve into issues such as the characteristics of cancer in Asia and the various approaches for regional cooperation that will help to overcome it, examining the current status in the Asian region and the various challenges that are currently being faced.
講義一覧
第3回
Cancer: Patient, Family and Society | 垣添 忠生
第5回
Cancer Research and Network in Asia | 野田 哲生
第6回
Asia Cancer Barometer: Challenges and Outlook 2 | 園田 茂人
第7回
Medical Expenditure and Cost Effectiveness of Cancer Care in Japan | 福田 敬
第8回
Universal Health Coverage and Recent Trend in Global Health | 武見 敬三
第9回
Cancer Treatment and Collaboration in Asia | 西山 正彦
第10回
An Asian Century with Inclusive Development | 河合 正弘
第11回
Asian Men’s Health | 堀江 重郎
第12回
Challenges and Outlook: Pharmaceutical companies in Asia | 野木森 雅郁

共に生きるための知恵(朝日講座「知の冒険—もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2014年度講義)
2014年度開講

共に生きるための知恵(朝日講座「知の冒険—もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2014年度講義)

自分をふり返ると、多くの人々そして様々な生物や無生物と関係を持ちながら生きているということに思い当たります。それは、ごく自然なことにも感じられますが、他方で相当な不安定さもはらんでいて、衝突や対立が起こる場合もあります。その不安定さを乗り越えようとする試行錯誤から人類が生みだしてきたのが、共に生きるための知恵ともいうべきものです。実は、様々な分野の学問は、その知恵を結晶させたものと見ることができるでしょう。この授業では、多様な学知を横断しながら、そのような努力の成果・到達点を確認しつつ、今なお残る困難さについて考えてみたいと思います。
講義一覧

共生の夢と困難さ

格差社会における共生のあり方

近代日本が「民法」と出会うとき

自然界にあふれる生物間共生

環境統治の時代―自然をめぐる国家と社会の共存

宗教の共存、宗教との共生

第6回
エジプトを生きてきたムスリムとキリスト教徒 | 大稔 哲也

“祖先の遺跡”は誰のものか?―文化財の保護と活用

人の輪に入るロボット

科学―その不確実さと、どうつきあうか

多主体協働共生のまちづくり

第10回
多主体協働共生のまちづくり | 小泉 秀樹

国際社会における共生の法

サステイナビリティ ― 未来をデザインするコンセプト(学術俯瞰講義)
2014年度開講

サステイナビリティ ― 未来をデザインするコンセプト(学術俯瞰講義)

コーディネータ 味埜俊(工学部) ナビゲータ   芳村圭(大気海洋研究所)  「サステイナビリティ」という概念は「持続可能性」などと訳され、人類が未来に向かって生存してゆくための目指すべき姿を論じるときに使われる。気候変動、将来のエネルギー、食糧の安全保障、財政危機、民族対立、貧困など、サステイナビリティに関わる、言い換えれば人類の将来に危惧を抱かせるようなさまざまな課題が世界中にあふれている。それらの課題の複雑さから、その解決には俯瞰的な視野や長期的視点が必要であり、また技術開発と社会的リフォームの両面が重要と言われてきた。この講義では、人類が未来に向かって生存してゆくために目指すべき姿を記述する概念として「サステイナビリティ」をとらえるだけではなく、課題の持つ複雑さを見極め、理解し、対処するための視点を与える概念として見直してみたいと考える。具体的には、以下のような視点から、サステイナビリティに関わる課題を扱うときの視点・考え方・理念・態度を論じる。
講義一覧

サステイナビリティ入門

「サステイナビリティ学」の視点から-IR3Sの目指してきたもの

政策学の視点から-現代社会とガバナンス

都市計画の視点から-アジアとヨーロッパの理念の違い

都市の物質とエネルギー代謝の視点から

発展途上国にとってのサステイナビリティ

教育学の視点から-ESDの役割

地球環境研究を統合するFuture Earth

環境倫理の視点から─サステイナビリティにおける「価値」の問題と「環境の豊かさ」

情報<よむ・かく>の新しい知識学(学術俯瞰講義)
2014年度開講

情報<よむ・かく>の新しい知識学(学術俯瞰講義)

コーディネータ 石田英敬(教養学部/付属図書館副館長) ナビゲータ   阿部卓也(情報学環)     <よむ・かく>は、記憶・思考・認識の基本的な身ぶりです。今日では、コンピュータもロボットも<よむ・かく>活動を行っていますし、ヒト、動物、生命が、いかに<よむ・かく>活動を行っているのか、多様な学問領域で研究が進められています。  本年度の学術俯瞰講義「情報」では、人文学から情報科学まで、ロボット学から認知科学・脳科学まで、文字学・書物学から情報デザイン学まで、知の先端領域を拓きつつある講師陣を迎えて、<よむ・かく>活動をめぐる<新しい知識学>の姿を皆さんと探ってみようと思います。

数学ー革新の歴史と伝統の力(学術俯瞰講義)
2014年度開講

数学ー革新の歴史と伝統の力(学術俯瞰講義)

コーディネータ 坪井俊(理学部) ナビゲータ   緒方芳子(理学部) 現代の数学はその長い歴史に支えられている。客観的な状況の評価や合理的な意思の決定のために数学は用いられてきた。人類が様々な事象に出会うたびに、それに対応するために数学は革新されてきた。数学の論理、数の概念は長い歴史の中で何度も問い直された。座標の方法の定着、複素数の発見、微分積分の創始など、高等学校で学ぶ数学の革新の後にも、幾何学の公理、連続の概念、変換の概念などを巡り、数学者の研究は進化し、新しい理論を生み出してきた。 数学は一方でそれ自体の整合性を求め創造的革新的に発展してきたが、他方で社会との関係の中で様々な飛躍を行ってきた。前世紀には数学の抽象化、形式化が大きく進んだが、これにより数学の応用範囲は拡がった。数学は科学の基礎として人々の事象のとらえ方に大きな影響も及ぼしてきている。 このような社会との相互作用の中で、数学の革新はそれまでの研究成果を止揚する形で進んだ。時には必要な応用への準備が数学の自体の中で前もって準備されているようなこともあり、現実の諸問題への数学の応用は社会から期待されるものになってきている。確率や統計の概念は、客観的な状況の評価や合理的な意思の決定のために現代の社会において重要な役割を果たすようになった。計算情報技術の大幅な進歩の中で、完成度の高い数理モデルの構築へむけて、現象を観測、分析、統合する側と数学の道具を開発する側の協働作業がますます必要とされている。 この講義では、これまでの数学の革新の歴史を振り返るとともに、そこで培われた伝統の力が新しい現象の理解、社会の問題への対処のためにどのように使われてきたかを、数理科学に関係する第一線の研究者に語っていただき、皆さんに数学の創造の現場の様子をお伝えしたいと思う。

新・学問のすゝめー東大教授たちの近代(学術俯瞰講義)
2014年度開講

新・学問のすゝめー東大教授たちの近代(学術俯瞰講義)

コーディネータ 吉見俊哉(副学長、情報学環) ナビゲータ   森本祥子(東京大学文書館、総合研究博物館) 日本近代を通じ、東京大学はこの国の「学」が生まれ、移植され、変容していく主舞台であった。英国における工業の発展がスコットランド経由で工学の形成を生み、医学はドイツ医学を基礎に発展し、和算から近代数学への転換があり、物理学では旧幕派がお雇い外国人経由でない知の形成を担った。他方、東大の公法学者は立憲制度の成立に深く関わり、軍事と学問の間にも一筋縄ではいかない関係があった。東大を主舞台に展開したドラマのすべてが、日本近代の学知の根幹をなす。ところが私たちは、過去の東大で誰が、いかにして学問を生み出してきたのかを意外に知らない。この講義では、近代の学問の結果だけを教えるのではなく、その知を創りだした人物、背景、そして「学」誕生の舞台となった東京大学の現場を再発掘する。東大を舞台に学問がいかなる人のつながりから生まれ変化していったのか、その歴史を戦後の東大で試みられた改革や大学紛争時の知的苦闘に至るまでたどっていく。

境界線をめぐる旅(朝日講座「知の冒険—もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2013年度講義)
2013年度開講

境界線をめぐる旅(朝日講座「知の冒険—もっともっと考えたい、世界は謎に満ちている」2013年度講義)

目には見えない無数の境界線を張り巡らせて、人は暮らしています。その基点となるべき私でさえも、どこまでが私なのかと問いかけることが可能です。少なくとも誕生と死というふたつの境界線の間に私は存在しているはずですが、脳死問題を考えれば、死にさえも人為的な境界線が持ち込まれることを拒否できません。  初年度のテーマ「震災後、魂と風景の再生へ」を受けて、昨年度は「幸福」を問題にしました。それは、さまざまな幸福の輪郭線を探る試みでした。幸福と不幸とを分ける境界線は、どこよりもまず人の意識の中に引かれるはずです。今年度は少し観点を変え、私たちがつくりだす無数の境界線に目を向けます。リレー形式の講義により、私・他者・国家・生物・地球の境界線を辿りながら、それらが誰によって、誰に向けて、どのように引かれているのかを見つめ直し、私たちの現在地を、私たちがこの世界のどこに存在しているのかを探ります。