突然ですがみなさん、このグラフを見てみてください。
これは、1950年から2060年までの日本の人口変動を予測したグラフです。
これを見ると、2060年の日本の人口は、なんと8674万人まで減少しているそう……現在(2022年2月)の人口が1億2500万人程度であることを考えると、40年で4000万人近く減ることになります。
こんなグラフを見ていると、いったい日本はどうなってしまうんだろうと、ついつい暗い気持ちになってしまいますよね。
しかし、人口が減った日本の未来は、本当に悲観すべきものなんでしょうか?
もしかしたら、この現状をただ嘆くよりも、先に考えるべきことがあるかもしれません。
AI技術の発達によってモデルを使って未来予測ができるようになった現在、私たちは将来を見据えるために何ができるのでしょうか?
インフラ・環境コンサルタントとして活躍し、現在は哲学・倫理学がご専門の佐藤麻貴先生と一緒に、未来について考える講義を紹介します。
未来予測は、将来像を描くための指針に過ぎない
そもそも、AIは未来をどのように予測しているのでしょうか?
現在のAIは、ディープラーニングによってビッグデータを統計処理することによって、未来についての予測を立てています。
従来の機械学習では、出力までの演算を人間がアルゴリズムで直接指示していましたが、ディープラーニングでは、学習データの蓄積による統計処理が行われた結果として、データが出力されています。
つまり、どういった処理によって未来が予測されているのか、人間側には分からなくなっているということです。
佐藤先生は、そこで提示された未来予測は、将来像を描くための指針に過ぎないと言います。
ディープラーニングによって提示された未来予測によって未来を悲観したり、また喜んだりするのではなく、それを踏まえて将来を見据え、今から何を準備しておくか考えることが大事だということです。
たとえば、冒頭で人口の未来予測を紹介しましたが、もっと横軸を長くとってみると、下のようなグラフになります。
こうして長いスパンで未来を考えてみると、2050年の人口は、活力を持って日本が大きな改革を成し遂げた明治維新や終戦期の人口よりも多くなるだろうということが分かります。
佐藤先生は、人口が少ないことが問題であるという見方に疑問を呈し、私たちに未来社会をどうしたいのか、学問を通して考えるべきだと呼びかけます。
学問を生かすも殺すも自分次第
学問の発達によって、私たちは過去を知り、未来を予測できるようになりました。
しかしそこで提示されているのは単なる情報でしかないと思います。
むしろ重要なのは、その情報をどう活用して、私たちの未来に向き合っていくべきなのではないでしょうか?
佐藤先生は、学問にはそれ自体で価値があるということを認めたうえで、「多角的視野を得て、不確実性の高い未来を切り開くためのツール」として学問を捉えます。
学問が生きるかどうかは、情報の量と、その情報の解釈にかかっているのです。
とりわけ、情報量が莫大になっていく情報化社会においては、この「解釈」こそが重要になってくると思います。
私たちは、どのような未来を生きるべきなのか。そのために学問はどのような役割を果たすことができるのか。ぜひこの講義動画を視聴して、これからの学問への向き合い方について考えてみてください。
今回紹介した講義:30年後の世界へ ― 学問とその“悪”について(学術フロンティア講義)第2回 未来社会2050 ― 学問を問う佐藤 麻貴
<文/竹村直也(東京大学オンライン教育支援サポーター)>