東京大学本郷キャンパスの中心にそびえ立つ安田講堂。
東大の学生は何度も目にして親しんでいると思いますし、観光や散歩で東大に来たことのあるかたの印象にも残っていると思います。
それでは、その安田講堂を作った建築家、内田祥三についてはどうでしょうか?
「内田ゴシック」という言葉になんとなく聞き覚えはあっても、詳しく知らないという人が多いのではないでしょうか?
そんなあなたのために今回は、内田と彼の建築について知ることで、東大を楽しく散策できるようになる講義を紹介します。
東大建築の祖・内田祥三
講師を務めてくださるのは、日本の近代現代建築史が専門の東京大学名誉教授、藤森照信先生です。
講義は、日本の建築を語るうえで外すことのできない重要人物である、日本に西洋建築を広めた明治期の御雇外国人、コンドルについての話から始まります。大正から昭和にかけて活躍した内田は、コンドルの生徒の辰野金吾の、そのまた生徒の佐野利器に学びました。
そんな内田はなんといっても、安田講堂をはじめとする東京大学の建築で知られています。
たとえばその作品は、安田講堂や東大総合図書館、東大工学部4号館、東大法学部3号館、東大農学部1号館、東大医学部1号館などなど……あなたがよく利用する建物も、もしかすると内田によるものかもしれません。
そんな内田はまた、貧しい人たちの住居問題にも尽力しました。自身も貧しい生まれである内田は、関東大震災で家を失った人たちの住居として、鉄筋コンクリートのアパートメント(同潤会アパートメント)を設立します。藤森先生によると、今では当たり前の鉄筋コンクリートは、内田らによるこのアパートから始まったそうです。
20世紀を代表する世界の建築家・丹下健三
講義が取り扱うのは内田にとどまりません。時代は進んで、代々木第一体育館や広島平和記念公園を作った建築家、丹下健三に話は移ります。
藤森先生は、丹下を「20世紀を代表する世界の建築家」だといいますが、その功績に比して知名度は決して高くはありません。
藤森先生は「絵画や文学と違って日本で建築は「教養」のなかに入っていない」といいます。そのため、丹下ほどのビッグネームであっても、私たちにはあまり馴染みがないのです。
しかし建築は、絵画や文学以上に、私たちの生活に密着しています。その来歴について知らないのは、少し残念ではないですか?
ぜひこの講義動画を観て、東大生にとって身近な建造物の話から、日本の近代建築の重要なトピックを学んでみてください。
今回紹介した講義:新・学問のすゝめー東大教授たちの近代(学術俯瞰講義)第3回 内田祥三・丹下健三と建築学の戦中・戦後 藤森 照信先生
<文/竹村直也(東京大学オンライン教育支援サポーター)>