みなさんは哲学者と聞いて誰を思い浮かべますか?
デカルト?カント?ヘーゲル?ニーチェ?サルトル?フーコー?
色々な名前が挙げられますが、どれも西洋の人物です。一番に日本の哲学者を思い浮かべた人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
日本の哲学だけでなく、中国思想やインド思想もまた、「哲学史」の本流からは区別されます。
しかし、私たちのあり方を根本から捉え直す哲学という営みにおいて、そのような偏りが生じるのは望ましくないことです。
そのような哲学の最前線が直面している課題について、哲学者の中島隆博先生と一緒に考える講義を紹介します。
哲学のあり方を組み替える「世界哲学史」
哲学の偏りを解消すべく、中島先生らによって今まさに実践されているのが、「世界哲学史」という取り組みです。
この世界哲学史によって、これまで西洋中心で語られてきた哲学のあり方を組み替えることが目指されています。
しかし、どうやって哲学を組み替えることができるのでしょうか?
この問いは簡単に答えられるものではありません。世界哲学史においては、どのような方法を取るべきか考えること自体が、チャレンジングな哲学的課題であるのです。
ただし、中島先生は、比較哲学のようなやり方に頼っていてはいけないと言います。単に各地域や時代ごとに思想を列挙しても意味がありません。二者間、三者間の比較にとどまるのではなく、最終的には世界全体の文脈で理解し、普遍化させる必要があるのです。
このような世界哲学は、安定しておらず、人を不安な気持ちにさせると言います。しかしそのおかげで、人が当たり前だと思っている常識を揺さぶることのできる可能性があります。
哲学の最前線を知る
このような抽象的な説明だけを聞くと、「結局どうやって世界哲学史を実現するの?」という問いばかりが浮かんでくるかもしれません。
繰り返すように、この実践はまだ始まったばかりであり、明確な答えはありません。
しかしその分、そこで交わされる議論は非常にアグレッシブです。
この講義では最後に学生からの質疑応答の時間があります。
「西洋と東洋の哲学に影響力の差が生じたのはなぜ?」「東洋の思想が更新されないのはなぜ?」「東洋的な感情を重視する思想には問題点があるのでは?」
このような学生からのクリティカルな質問に対し、中島先生は積極的に、そして真摯に応えてくださっています。そのような中島先生の姿から、みなさんもきっと哲学の最前線を感じることができるはずです。
今回紹介した講義:30年後の世界へ ―「世界」と「人間」の未来を共に考える(学術フロンティア講義)第4回 世界哲学と東アジア 中島 隆博先生
<文/竹村直也(東京大学オンライン教育支援サポーター)>