みなさん、こんにちは!
季節はすっかり春ですね。
東京大学本郷キャンパスでも桜が立派に咲きました。
春といえば、新しいことに挑戦してみたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
その挑戦してみたいことの選択肢に「芸術」を入れてみてはいかがでしょうか。
「絵を描いたり演奏したりできないし、そもそも芸術って何か全然わからないよ…」
そう思った方!
是非ともご視聴していただきたい講義動画があります。
それは、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、近藤薫先生の「芸術とは〜目に見えないものを文化する」という2021年に行われた講義です。
実は近藤先生は、特任教授でありながら、日本で最も古い歴史と伝統をもつオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターを務めるヴァイオリニストでもあります。
今回ご紹介する講義動画では、近藤先生がなんと実際に講義内でヴァイオリンを弾きつつ、「芸術とは」という問いに、研究者として、また、プロのヴァイオリニストとしてひとつの答えを出してくださっています。
是非この機会に、プロの研究者・演奏家の芸術論に触れてみてはいかがでしょうか。
本講義は三部構成になっています。
まず、芸術とは何かを近藤先生が実体験にも基づいてお話しされます。
次に、「音によるコミュニケーション」と題して、近藤先生が実際にベートーヴェンのヴァイオリンソナタを演奏して、演奏時に何を考えていたのか、何が起きていたのかを解説されます。
最後に質疑応答が行われます。
では、早速、講義内容に入っていきたいと思います。
芸術とは
近藤先生は、演奏をしているとき、特に自然の中で演奏をしているときに「ゾーンに入る」ことがあるとお話しされます。
ゾーンに入るとは、スポーツ選手にも同様にみられる現象だそうで、例えば野球のバッターが打席にたったとき、ピッチャーの投げた球が止まって見えるようなものだそうです。
この状態ではいろいろ不思議なことが起きるとのことです。
講義では、実際に近藤先生が山の中でヴァイオリンを演奏したときの映像が流れます。
近藤先生はこういった不思議なこと(実際に映像を見ると確認できます!)は、感覚が研ぎ澄まされることによって気づけたものだと説明されます。
つまり、それまで無意識に感じていたものを認識できて気づけた結果だそうです。
この「気づける」ことが大変重要だそうで、ここに芸術の役割があるとお話しされます。
社会から省かれる「無駄」
さらに近藤先生は、文化的な社会を作る上での芸術の重要性に触れます。
近年は、COVID-19のパンデミックやAIの普及により、社会から無駄と考えられるものが省かれる流れが強くなっています。
しかし、それは本当に無駄といえるのでしょうか、と近藤先生は問いかけます。
無駄かどうかよく分からないまま取り除いてしまうと、社会におかしなことが生じてしまいます。
目に見えないもの、説明し辛いものの本質に迫るのが芸術です。
そんな芸術の立場に立つことで、社会から取り除かれているのものが本当に無駄と言えるのか考えることができるのです。
生演奏大公開!!
次は第二部の「音によるコミュニケーション」です。
実際に近藤先生が、ベートーヴェン作曲のヴァイオリンソナタ第7番第2楽章を演奏されます。
演奏後は、演奏中に起きていたことと、それに対して近藤先生がどうやって演奏で対処していたのかについてお話を聞くことができます。
たとえば、この曲はゆっくりとしたテンポで弾くようにと楽譜で指定されているそうですが、ゆっくりとは実際にはどのくらいのゆっくりさなのか、という問題があります。近藤先生は音を使ってピアノの方といかにコミュニケーションし、ちょうど良いテンポを二人で作り上げていったのか、その工程を音楽に詳しくない人にも分かりやすくお話しくださいます。
これ以外にも面白いお話がたくさんあります!
演奏と合わせて、是非とも聞いてみてください。
この記事を執筆している私はとても新鮮な体験ができました。
以上、近藤先生の講義の紹介でした。
芸術とは気づけなかったものに気づけるようになるもの、と聞いていかが思いましたでしょうか。
芸術についてのイメージが少しでも変わりましたら幸いです。
講義が演奏も併せて芸術を論じているということもあり、この記事からだけでは、しっかりと内容を伝えられていない点も多々あります。
特に演奏のところはとても面白いので是非ご視聴ください。
今回紹介した講義:先端アートデザイン学 第5回 芸術とは〜目に見えないものを文化する 近藤 薫先生
●他の講義紹介記事はこちらから読むことができます。
<文/依田 浩太郎(東京大学オンライン教育支援サポーター)>