【あなたの周りの不思議な物質】チューインガムの物理
2023/05/24

みなさんは普段の生活の中で不思議だなと感じることはありますか?
実は身の回りには不思議な性質を持つものがあふれています.


何気なく過ごしていますが,よく考えてみると近くにあるのです.
そこで今回は,チューインガムをテーマにその不思議な性質を学ぶ講義を紹介します.

ガムとゴム

今回取り扱うのは噛んだ後のチューインガムです.
ガムは噛むと軟らかく,風船のように膨らませることもできますね.
あの状態の物理的な性質について考えていきます.
ゴムの木から採取される生ゴムもガムと呼ばれます.
そして生ゴムから輪ゴムのようなゴムが作られています.
輪ゴムも今回取り扱う物質のひとつです.

東京大学 Todai OCW 学術俯瞰講義 Copyright 2013, 土井 正男

物質は大きく分けて気体,液体,固体とあります.
気体は空気なのでチューインガムは気体とは違いますね.
では残る液体と固体で考えると,チューインガムはどっちなのでしょうか.

液体は水のように流れ,器によって形が変わるのでどんな形にもできます.
2つのコップに分けても,1つのコップに入れると元に戻る性質もあります.
チューインガムは分けてもまとめて噛めば1つに戻ります.
でも流れはしないので液体ではないですね.
では固体なのでしょうか.
固体は金属やプラスチックのように流れはしないです.
しかし2つに分けると,もとには戻せません.
ということはガムは固体とも言えないです.
両方の性質を持っているように感じます.
ガムは液体とも固体ともつかない,不思議な物質ですね.
こういった不思議な物質をどう理解するべきなのか,これが今回の講義のテーマです.

東京大学 Todai OCW 学術俯瞰講義 Copyright 2013, 土井 正男

ゴムの不思議な性質

ゴムの不思議な性質のひとつに弾性があります.
弾性とは,固体に力を加えたときに生じる変形が力を取り去ると元の形に戻る性質のことです.
輪ゴムを引っ張ると形が変わり伸びますが,手を離すともとに戻りますよね.

東京大学 Todai OCW 学術俯瞰講義 Copyright 2013, 土井 正男

ところで,輪ゴムを引っ張ったときのゴムの伸びを見て,どこまで伸びるのかなと不思議に思ったことはないでしょうか.
ゴムはよく伸びるのです.
金属やプラスチックは伸ばそうとしても伸びませんよね.
思いっきり引っ張ると,伸びるというよりむしろ割れたり折れたりしてしまうかもしれません.
実は金属やプラスチックは数%伸ばしただけで割れてしまいます.
一方,ゴムは数百%伸ばしてもちぎれません.

さらに輪ゴムは奇妙な温度依存性を持っています.
実は引っ張ると温かくなるのです.
えっ,本当に?と思った皆さん!
ぜひ輪ゴムを引っ張ってみてください.
引っ張って触ってみると少し温かいです.
例えば両手で輪ゴムを引っ張り,輪ゴムの伸びたところに少し唇を当ててみると,ほんのり温かく感じます.
※伸ばした輪ゴムから手を離すと勢いよく元の形に戻ります.顔や手に当たると危ないので,引っ張るときには気を付けてくださいね.

反対に,ゴムは収縮させると冷たくなるのです.
さらに,普通の物質は温めると膨張しますが,ゴムは温めると縮みます.
…えっ,どういうこと?
そんな疑問がわいてきませんか?

なぜゴムはこんなにもよく伸びるのか?
なぜ伸ばすと温かくなるのか?
そしてなぜ温めると縮むのか?

気になる理由は講義の中で!
ゴムの発明や日常に普及するまでの歴史も含めて学ぶことができます.

不思議な物質は他にも!

実は固体とも流体ともつかないような不思議な物質は身の回りにあふれています.
例えば,歯磨き粉,ケーキ,卵などなど.
軟らかいときもあれば固いときもあったり,ドロッとしていたりネバネバしていたり.
よく日常を振り返るとあなたの周りにも不思議な物質はあふれています!

見慣れた現象でも,実はその理由や原理が分かっていないことが多いです.
ゴムや金属,プラスチックといった物質では,弾性のような物理的な性質がそれぞれ異なっています.
そのため引っ張るために必要な力も違いますし,引っ張って壊れるまでの変形量も違うのです.
こうした物理的な性質はものづくりや産業に役立ちます.
何か新しいものをつくるときには何か物質を加工しますよね.
物質を取り扱うために物理的な性質を理解することは必要です.
こうした物質に関する研究は最先端技術の研究につながっているのです.
きっと皆さんの日常の中にも最先端技術につながっているものが潜んでいるはずです!

今回紹介した講義:物質の神秘 ― その生い立ちから私たちの未来まで(学術俯瞰講義)第11回 チューインガムの物理

●他の講義紹介記事はこちらから読むことができます。

<文/東京大学オンライン教育支援サポーター>