あなたが高齢者になった時、どのような人生を送っていたいですか?
人生100年時代と言われるようになり、老後の人生に夢を描いている人もいるのではないでしょうか。
今回は、ジェントロジーという、高齢者や高齢社会全般に関わる諸課題を研究対象とする学際的学問分野について取り扱う講義動画を紹介します。
ただ歳をとるだけではない「サクセルフル・エイジング(Successful Aging)」という考え方について深掘りしたり、それに関連する学際的なプロジェクト内容、その中で心理学がはたす役割について紹介しています。
サクセスフル・エイジングとは一体どんな考え方なのでしょうか?
従来、老年学というのは寿命を長くすることに主眼が置かれていました。
それが、近年はQOL(Quolity of Life:生活の質)の追求に焦点がシフトしてきています。
その転換のきっかけになったのは、サクセスフル・エイジング(Successful Aging)、すなわちうまく歳をとるという考え方だと秋山先生は説明しています。
この概念は1987年にRoweとKahnによって発表されました。彼らによると、以下の3つが揃うと「サクセスフル・エイジング」になるとされています。
1. 病気や障害がないこと
2. 高い身体・認知機能を維持していること
3. 人生への積極的関与をしていること(他者と積極的に関わり社会に貢献していること)
まとめると、「自立して生産的であること」が鍵になるのです。
しかし、寿命が伸びて続けている現在に、亡くなる直前まで「自立して生産的である」というのは現実的と言えないのではないかと秋山先生は指摘しています。
従来型のサクセスフル・エイジングの問題点を踏まえた上で、秋山先生は新時代のサクセスフル・エイジングとして、「住み慣れた地域で自分らしく生きる」ことを提唱します。
そして、それが実現できるような社会システム構築に向けて、医学や看護学、経済学、社会学、工学など多様な学問分野との連携プロジェクトを行っています。
その中でも先生の専門である心理学は、高齢者の引きこもりやうつ、犯罪などといった社会問題の解決に有効だと言われています。しかし、それらの社会問題を取り扱った心理学のデータの多くは、欧米の若い男性を被験者として集められており、高齢者を対象とした研究はまだ不十分です。
高齢者を対象とした一例として、知能に関する研究が紹介されています。
加齢に伴う知能の変化と聞くと、多くの人が中年をピークに衰退していくイメージを持っているのではないでしょうか。
ところが、必ずしもそうとは言えないことが実際のデータからわかってきました。
そもそも知能はいくつかの種類に分けることができ、それぞれ発達(衰退)の仕方も様々で、トレーニングにより復活するものもあります。中には、中年期を超えても加齢が進むにつれて、むしろ伸びていく知能もあるのです。こうしたデータを用いることで、新たな雇用の形が検討されることが期待されます。
そして最後に、先生が20年に渡って6000人を調査した研究も紹介されています。15年後の健康度と強く関連する要因、また男女別の要因の違いなど、気になった方はぜひ動画で確認してみてください。