皆さんは「ネットワーク」というと何を想像しますか?
人と人の繋がり、インターネット、他にも様々なものを思いつくかもしれません。
その中でも今回は、企業同士のつながりを分析する研究について語られた、「企業同士のつながりとイノベーション活動―数十万件のつながりの分析から―」という講義をご紹介します。
企業のつながりを分析するとはどういうことか、そしてそれがイノベーションに繋がるとはどういうことなのか。
工学系研究科 技術経営戦略学専攻の坂田一郎先生による、情報工学の手法と経営学をハイブリッドさせた研究を、早速見ていきましょう!
そもそもネットワークとは?
そもそも何をネットワークというのでしょうか?
講義では、ネットワークはノードとリンクで構成される、「つながりの束」として定義されています。
簡単に言えば、ノードというのは点に当たり、リンクというのが点と点を結ぶ線のようなものです。
例えば、送電ネットワークでは、発電所などがノードにあたり、送電線がリンクにあたります。
また、知り合いネットワークでは、人がノード、友達といった関係がリンクと言えます。
坂田先生の研究対象の一例としては、研究論文が挙げられます。論文の引用・被引用といった関係を分析することで、膨大な数の論文について、そのつながり(例えば関連性など)を知ることができます。
冒頭でネットワークというと何を想像するか、と問いかけましたが、皆さんの想像したネットワークのノードとリンクは何か、考えてみてください。
実は講義の最後のグループワークでも、このようにネットワークのノードとリンクを考え、そのネットワークの分析から何がわかるかを考えるというのがテーマになっています。
企業のつながりを分析するとは?
では、講義のテーマである企業のつながりはどのように分析しているのでしょうか。
例えば、企業をノード、企業間の取引をリンクと考えたネットワークの分析があります。
企業間の取引ネットワークをモデリングすることで、地域における企業の取引構造などを定量的に分析することができます。
ネットワークを定量的に評価する尺度は講義でいくつか紹介されています。
その一つに、企業間のつながりのダイナミズムの尺度として、「新陳代謝度」というものがあります。
これは「ある期間の中で、企業間の取引がどの程度入れ替わったか(新陳代謝しているか)」を意味します。
新陳代謝度は0~1の値を取り、値が小さいほど入れ替わりが少ないことを意味します。
つまり、新陳代謝度がほぼ0の会社は、例えば老舗でずっと同じものを売り続けていて、取引している会社もずっと同じものを作り続けている、というようなイメージです。
上の画像中のグラフは2010年から2014年の東北地方の新陳代謝度の分布を示しています。平均値が約0.2であるため、この期間に20%ほど取引の内容が変わったことを意味します。
また、2010年から2014年の新陳代謝度を地域別に見てみると、新陳代謝度が低い企業は存続期間が短い傾向があることや、経済活力が高い地域や産業には新陳代謝度が高い企業が多いことなどがわかりました。
さらに、地域差を見てみると、特に宮城県や愛知県などで新陳代謝度が高くなりました。宮城県は震災の影響で企業間の取引に大きな変化があり、愛知県はトヨタ自動車の影響だと考えられています。
企業ネットワーク研究の重要性
最後に、そもそも企業のつながりを分析することがなぜ重要なのでしょうか。
背景には、イノベーションにおける「地域」の重要性や、中小企業が取引先・外注先との接触を重要視していることなどが挙げられます。
オンラインなどが進んだ現在においては、専門人材と創造活動を惹きつける環境や、知の融合と創発の場といった環境が一層重要性を増しており、それに伴って地域の産業構造や企業間のつながりをネットワークとして捉えて分析することが重要になっています。
また、「つながり(ネットワーク)」を新たな経済指標として活用することも考えられています。
つながりを指標とすることで、地域内の隠れた重要企業を見つけ出すことが可能になり、地域経済圏で重要な役割を果たす企業への支援といった政策の根拠にも用いることができます。これにより、役所とつながりのある企業に投資が偏るといったことも回避できます。
おわりに
今回は企業のつながりについての研究・講義をご紹介しました。
実際の講義では、この研究の重要性や背景、またつながりをどのようにして分析しているのかといった手法などについて、詳しく説明されています。
ぜひ講義映像もご覧ください!
<文/おおさわ(東京大学学生サポーター)>
今回紹介した講義:「つながり」から読み解く人と世界(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2019年度講義)第8回 企業同士のつながりとイノベーション活動―数十万件のつながりの分析から― 坂田 一郎先生




