不安の時代(朝日講座「知の調和―世界をみつめる 未来を創る」2020年度講義)
2020年度開講
20世紀後半と比べて現代の日本では、将来の就職、結婚、老後がどうなるかが不透明になっており、自分の将来像を描きにくくなっている。国家が経済的、政治的に衰退に向かっているという予測を耳にする機会も増え、社会や国家の将来に対する不安もかつてないほど高まっている。一方、グローバル化と社会の複雑化に伴い、国外の様々な集団はもちろんのこと、同じ社会や共同体に属している他の人々の考え方や行動の意味も把握しにくくなっている。そのためか、特定の集団を、自分たちを脅かす悪しき「他者」と見なすことで、本来は複雑であるはずの不安の背景や原因を単純化し、恐怖や敵意といった感情を煽ることで、自分たちの集団を結束させようとする現象もしばしば見受けられる。このような現象は日本に限った話ではなく、欧米においても外国人や異教徒を排斥しようとする動きや右傾化が起きている。 このような趨勢が明るい未来につながるとは考えにくい。そこで本講座においては、宗教学、歴史学、社会学といった様々な切り口から、個人や社会に不安が生じる背景やメカニズム、不安と「他者」の関わりなどについて考察する。不安に対峙するのにまず必要なことは、安易でシンプルな解決法に飛びつくことではなく、困難で複雑な状況への理解を深めることだからである。不安からの脱却は理解の延長上にある。一連の講義を通じて履修者には、情動に流されることなく現実を見据える視座を育み、不安の時代を生き抜くためのヒントを手に入れてもらいたい。