【特集】令和元年度 退職教員の講義紹介②
2020/03/30

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

今回も前回から引き続き、今年度退官される先生方の研究史の一部として、OCWに公開されている講義の中で、社会科学分野の講義を3つご紹介します。グローバル化によって、私たちの見つめる世界が劇的に変化する時代において、常にその最先端から世界の捉え方を見つめ直す社会科学という学問は、これからの時代を生き抜くヒントを与えてくれます。

井上達夫先生「後期ロールズの政治的リベラリズム」

(2011年度学術俯瞰講義「正義を問い直す」より)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_927/

リベラリズムとは自由主義ではなく、正義の実現を目的とした政治思想である――これが井上先生のメッセージです。確かに、正義と自由はその実現のために重なり合うところも多いですが、全く同じものではありません。自由が達成されても、正義が実現されていない場合も存在します。だからこそ、井上先生はロールズのリベラリズムの分析にあたっては、政治哲学の教科書では正反対に位置付けられることもあるサンデルの共同体に力点を置いた思想との比較が重要だと解説します。

丸山真人先生「市場原理と生活世界」

(2013年度学術俯瞰講義「社会と倫理-<人間>の限界を問う」より)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1144/
「成長神話を超えて」
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1145/

「経済人類学」という学問は、「〇〇人類学」の一つとして、私たち人間や自然の「経済」の在り方を根本から見直すことを目指しています。その専門家である丸山先生は、現代の資本主義社会に対して見直しを迫ります。先生の主張をかみ砕けば、資本主義社会は「無限ともいえるような量のAmazonの商品が届けられるものの、その段ボールが捨てられずに溜まっていく家」と言えるでしょう。何をしても心が満たされず、毎日が目まぐるしく息苦しい人にぜひ見てほしい資料です。

味埜俊先生「日本が世界のサステイナビリティに貢献できること」

(2017年度学術俯瞰講義「地球と社会の未来を拓く」より)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1526/

最近街中でも、SDGs(持続可能な開発目標)のポスターを目にすることが多くなりました。SDGsというスローガンは今や国際社会に限らず、企業や地方創世の話題でも見聞きします。本講義がとりあげる「サステイナビリティ」という言葉も、SDGsと密接に関係していますが、ここでは実は、日本こそがサステイナビリティと通して克服すべき課題が多い「課題先進国」だとして、歴史の教訓や自然災害、高齢化の問題に焦点が当てられています。