【特集】令和元年度 退職教員の講義紹介①
2020/03/27

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

今年度も、弊学での研究に一つの区切りをつけて退官される先生方がいらっしゃいます。例年であれば、こうした先生方は最終講義という形で、ご自身の研究の集大成をまとめてくださいます。しかし今年に限っては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、惜しくもそうした場が確保されがたくなっています。そこでこのブログでは、全3回にわたって、今年度退官される先生方がUTokyoOCWで公開されている講義の一部をご紹介します。

第1回となる今回は、数理・自然科学というテーマで4名の先生方の講義に焦点を当てます。

須藤修先生「情報爆発とイノベーションの形態変化」

(2007年度学術俯瞰講義「情報が世界を変える-技術と社会、そして新しい芸術とは」より、第5回)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_122/

「ネットワークを活用した新たな社会システム ―政府機能と医療の刷新」(第6回)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_123/
「グローバル化するネットワーク社会とガバナンス ゲスト:長谷部恭男」(第7回)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_124/

インターネットの出現から少し経った2000年初頭は、一つの大きな転換点でした。当時、インターネットがイノベーションを生むためには、社会や人々に対して、新技術を活用する制度や知識を補うことが喫緊の課題であるとされていました。本講義は、今でこそ馴染みのあるICTやIoTと呼ばれる技術が社会に応用されるためにはどのようなシステムが必要とされたのか、技術単体では乗り切れない、それを取り巻く社会の変革に焦点を当てます。

廣瀬通孝先生「リアルとバーチャル-コンピュータの進化とVR世界の創出」

(2010年度学術俯瞰講義「ネットとリアルのあいだ―知のデジタル・シフトとインターネット社会の未来」より、第5回)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_801/

「ヒトと機械―デジタル化時代の人間とは」(第6回)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_802/

VR研究の第一人者である廣瀬先生は、VRを通した時間の超越と五感の拡張という2つの可能性に言及します。時間の超越については、特殊相対性理論体験やデジタルミュージアムの事例などによって、 私たちが過去と未来を自由に往来可能になったことが示されます。 五感の拡張については、映される映像によって味が変わったと感じるメタクッキー実験を通して、映像技術だけにとどまらないVRのさらなる可能性が示唆されます。

合原一幸先生「脳の数学」

(2011年度学術俯瞰講義「国境なき数学-ことばを越えて社会とともに」より)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_904/
「ガンの数学」
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_905/

「数学」はどこまでできるのか、これが本講義の問いです。ここでは現実の諸問題を数学によってモデル化することで、その現象の説明や解決のために数学が一定の役割を果たしていることが示されます。たとえば、ミクロな世界では脳神経の電位変化から癌などの疾病に対する効果的な治療まで、マクロな世界では新型インフルエンザなどに対する施核的な拡散予想やワクチンの最適分配に至るまで、数学は私たちが求める限り様々な形で解決の糸口を与えてくれます。

石川正俊先生「コンピュータがよむ・かく」

(2014年度学術俯瞰講義「情報<よむ・かく>の新しい知識学」より)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1279/

コンピュータに求められる能力は、ここ2、30年で大きく変わりました。従来の人間の感覚機能をより高性能に再現するための映像技術に取って代わって、人間そのものの代わりとなるように、人間が行う認識とそれに対応する行動を素早く処理する技術が加速しています。石川先生は、研究者人生の中でその転換点に立ち会ってきましたが、本講義では先進技術も実は、「高速ドリブル」や「生卵キャッチング」のような素朴で面白みのある実験から生まれてきたと紹介します。