9月のおすすめ講義②🌰

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

昨今ではマスメディアを通じて、「社会学」という学問も広く世間に知られるようになりました。しかし、社会学専攻のコメンテーターが現代社会の諸問題に対して鋭く語る姿が映し出される一方で、社会という膨大な守備範囲を有するこの学問を支える方法論や問題意識といった部分については、まだ十分理解されているとは言えないでしょう。この社会学の奥深さと隣り合う不透明さに対して、日本社会学会は今年4月に進路に悩む高校生に向けて「社会学への誘い」(https://jss-sociology.org/school/)というウェブページを開設しています。そこで今回はUTokyoOCWでも、2010年度に開講された学術俯瞰講義「社会学ワンダーランド」(https://ocw.u-tokyo.ac.jp/course_11328/)を通して、社会学の研究者が何を明らかにしようとしているのか、その一端をご紹介します。

佐藤俊樹先生「常識をうまく手放す―集計データから考える」

(2010年度開講学術俯瞰講義「社会学ワンダーランド」より第2回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_824/

社会学の関心の一つは、社会調査に基づく統計データを利用して、既存の社会に対する説明モデルを批判・再構築することにあります。しかし、こうした社会学のモチベーションは常識を悪として、新しい理論を追求することを善として正当化しようとし、それによって統計データを恣意的利用するおそれを内包しています。佐藤先生はこうした態度を、「私だけが社会の真実を知っているとする「厨二病」である」と痛烈に批判します。では、常識と批判に板挟みになった社会学は何を指向するのでしょうか。

佐藤健二先生「「お化け」もまた社会学の対象である―クダンの誕生」

(2010年度開講学術俯瞰講義「社会学ワンダーランド」より第5回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_827/

クダン(件)とは、日本の妖怪譚に出てくる半人半牛で疫病や豊作の予言をする怪異を指します。一見、この妖怪と社会学の間には何ら関係がないように見えますが、佐藤先生はクダンの誕生と形成を、流言飛語といったウワサの生成と拡散をめぐる歴史社会学からアプローチします。震災やコロナ禍でしばしばみられるデマを始めたとした流言が、それを取り巻く人々の多様な動機が折り重なって進行する言語ゲームだとすると、そこには当時の人々の言葉に対する歴史性を垣間見ることもできます。

山崎喜比古先生「健康の観点から生き方と社会を問う」

(2010年度開講学術俯瞰講義「社会学ワンダーランド」より第12回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_834/

社会学が対象とする社会には、本質的に文理の壁は存在しません。したがって、社会学は、医療の分野も健康社会学として対象にしています。この健康社会学という学問は、20世紀後半にWHOがヘルスプロモーションという概念を提唱して以来、医療は「人間の身体から病を取り除くためにある」とするよりも、むしろ「病を予防し健康を維持するために機能する」というわたしたちの医療観に大きく寄与してきました。健康に生きることが指向される社会で、山崎先生はストレスと人間の間の付き合い方に関する研究を紹介します。

社会学は、特定の専門を抱えているわけではなく、時代や地域を越えた社会のあらゆる事象が研究の対象となり得ます。しかしそれは、磔岩のような知識の集合体ではなく、社会調査や統計を駆使しながら常識にとらわれないモデルを構築する営みに裏付けられていることを、社会学の知見に触れる折に思い出してみてください。