10月のおすすめ講義②🍄
2020/10/30

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

ノーベル賞シリーズの第2回は、ノーベル物理学賞に焦点を当ててみましょう。今年の同賞の受賞理由は、ブラックホールの存在とそれが私たちの銀河の中心にあることの証明でした。宇宙についての理解をすすめるブラックホール研究の最大のポイントは、他の惑星と異なり観測が難しく、ブラックホール独特の理論の上に成り立っていることにあります。ブラックホール研究は、直近の宇宙に関する研究の一つの潮流である、実は宇宙は目に見えない物質で満ちているというブラックマター(暗黒物質)の問題とも深く関連しています。そこで今回は、以上の問題に対して、長年アプローチし続けてきた宇宙物理学の先生方の講義をご紹介します。

佐藤勝彦先生「時空-物質の演舞の舞台-」

(2005年度開講学術俯瞰講義「物質の科学 ‐その起源から応用まで」より第4回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_5/

宇宙の物質や成り立ちを考える際に、一つの立ちはだかる壁というのは、時間と空間であると佐藤先生は指摘します。時間の絶対性は私たちが生活している上では当たり前に思えるかもしれませんが、アインシュタインが特殊相対性理論を確立させた段階で、その前提は怪しくなりました。空間も同様に、宇宙では物質の質量に対して空間が曲がることを考慮します。ブラックホールや暗黒物質の存在がどうして分かるのか、そのヒントを宇宙における時間と空間の謎から迫っていきます。

村山斉先生「銀河誕生」

(2013年度開講学術俯瞰講義「物質の神秘―その生い立ちから私たちの未来まで」より第3回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1127/

本講義は、今年のノーベル賞受賞者であるゲンツェル氏がもたらしたブラックホール研究の功績に言及しながら、まずは私たちの銀河が宇宙の中でいかに誕生したか、そして形成されているのかを解説します。その過程で私たちもそこに生きる銀河という星の集まりは、宇宙全体で見ればムラのほんの一部でしかなく、その他大部分を占めるのが暗黒物質である説明されています。村山先生は、この観測不能な暗黒物質をいかに突き止めるかという壮大な実験と研究をすすめられています。

須藤靖先生「宇宙は物理法則に従っている」

(2017年度開講学術俯瞰講義「物質のはじまりとはたらき―フェムト、ナノ、エクサの世界」より第2回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1599/

前述の佐藤先生の講義は、時間や空間を疑うところから、宇宙の解明は始まると述べました。しかし、それは宇宙の真理が私たちの埒外にあるという意味ではなく、人類が長い時間をかけて明らかにしてきた物理法則から新たに発見されていくと須藤先生は指摘しています。本講義で取り上げられ、2017年のノーベル物理学賞の受賞理由ともなり、また今回のブラックホールの研究を大きく前進させた重力波も、そうした宇宙物理学の思考の産物です。

宇宙は古くから人々の心を引きつけ、またロマンの対象ともされてきました。それは未だ多く残る謎が無限大の可能性を私たちに考えさせると同時に、そうした謎の解明こそ人類が自分たちの未来を切り開く原動力となってきたからでしょう。OCWには今回ご紹介した講義の他にも、宇宙に関する講義が多く収録されています。第二の地球の探求やヒッグス粒子など、日進月歩な宇宙の研究にぜひ触れてみてください。