11月のおすすめ講義②🙂

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

先月から続くノーベル賞特集の第4回は、平和賞を受賞した国連世界食糧計画(WFP)も理念として掲げている「人間の安全保障」を取り上げてみましょう。国連が1994年に提唱した「人間の安全保障」という構想は、従来の主権国家による安全保障の枠組みでは対処しきれない国際的な人権保護や、そもそも国家による国民統合や実効支配が失敗している地域での人道支援を円滑に行うために打ち立てられました。WFPが今日ノーベル平和賞受賞に至るまで国際的に活動を続けられたのも、多くの国々がこの理念に賛同してきたからとも言えます。そこで今回は、人間の安全保障を扱った2007年度開講学術俯瞰講義「社会から見たサスティナビリティ―平和・開発・人権」からいくつかの講義をご紹介します。

緒方貞子先生「人類社会の未来:人間の安全保障―政策的展開」

(2007年度開講学術俯瞰講義「社会から見たサスティナビリティ―平和・開発・人権」より第1回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_91/

緒方先生といえば、2001年に設立された国連の人間の安全保障委員会にて、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン氏とともに共同議長として、アイデアレベルにあった人間の安全保障を国際社会の中でいかに実行に移していくか、その具体策の提案に尽力された人物です。講義の中で緒方先生は、人間の安全保障を考えるに至った、20世紀末から断続的に起こる新しいタイプの紛争や事件について言及しながら、同構想の根幹について臨場感をもって解説します。

佐藤安信先生「持続可能な平和の課題」

(2007年度開講学術俯瞰講義「社会から見たサスティナビリティ―平和・開発・人権」より第2~4回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_92/

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_93/

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_94/

人間の安全保障は、WFPに代表されるような人道支援に留まりません。人間一人一人に重大な危険を及ぼす根本的な問題を解決しなければ、その間続けられる支援もいずれは限界を迎えます。この講義で取り上げている紛争地における平和構築は、紛争解決に不可欠なものです。佐藤先生は、カンボジアでの国連による暫定統治機構(UNTAC)を一つの事例として、平和構築学という学問が、人間の安全保障を進めていく一つの歯車としていかに活用できるかに焦点をあてています。

山影進先生「アフリカに見る問題の噴出」

(2007年度開講学術俯瞰講義「社会から見たサスティナビリティ―平和・開発・人権」より第11~13回)

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_101/

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_102/

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_103/

この講義シリーズの後半ではアフリカという、戦後植民地支配から独立しながらも地域によっては国家形成に試行錯誤し、まさに主権国家と人間の安全保障をめぐる実験場とも揶揄される舞台に焦点が当てられます。なぜアフリカでは世界の他地域で歴史的に経験されたような国家がうまく成立しないのかという疑問から始まり、こうした混迷極まる地域事情を逆手にとって、GISなどコンピュータの力を借りながらアフリカ国家のこれからを分析する最新の研究手法が紹介されます。

今回のWFPによるノーベル平和賞受賞は、危険を顧みず紛争地域へ食糧を届け続けたという勇敢さばかりが強調されがちですが、同機関の活動は本稿で紹介した「人間の安全保障」という概念を国際的に周知させ、多くの国がそれに賛同しながら協力することで初めて功を奏します。冒頭の講義で緒方先生が述べられたように、紛争のあり方が前世紀より大きく変容した現在においては、それに対する支援の枠組みも変えていく必要があるのではないでしょうか。