2月のおすすめ講義👹

こんにちは、UTokyoOCWスタッフです。

 みなさんは、自分の子供時代を即座に思い出すことができますか。思い出せる量の多い少ないはあれど、誰しもが簡単に一つくらいのエピソードを思い出すことはできるでしょう。

 では、親子でその話題になったとき、お互いが語る記憶のイメージに食い違いはありませんか。子供の頃から几帳面だと自分は思っていても、親から見ればわんぱくな子供であったりと、同じ事実についての記憶が食い違うことはよく起こります。

 そこで今回は、「記憶」をテーマとした講義の中でも「記憶を作る/利用する」ことに焦点を当てた講義をご紹介します。

 2015年度学術俯瞰講義「脳の科学―シナプスから人生の意味まで」から井ノ口馨先生の「虚記憶と実記憶―神経細胞集団による情報の符号化」
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1371/

 井ノ口先生の講義の出発点は、物質である脳が非物質である記憶をどのように処理するか、という視点から始まります。脳が記憶を蓄えるプロセスを理解することで、人工的に記憶を合成して新しい記憶を生み出したり、PSTDにおけるトラウマの治療に役立てようというビジョンが見えてきます。

 2019年度朝日講座「「つながり」から読み解く人と世界」から池澤優先生の「未来を開く死者の「記憶」―生死のつながりの視点から―」

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1816/

 阪神淡路大震災の記録を手がかりに、「死者の記憶」という一見過去のものに見える記憶が、実は私たち生者にとって、現在の視点だけでなく未来への希望も織り込んで形作られている点が強調されます。死は誰しもに平等に、一回しか訪れない出来事であるだけに、池澤先生は、私たちが他者の死に単なる物質的喪失以上の意味を与えようとしていることを指摘しています。

 2011年度朝日講座「震災後、魂と風景の再生へ」からマイク・モラスキー先生の「居酒屋と喫茶店に見られる昭和ノスタルジー――<第三の場>から再生を考える」

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1109/

 SNSなどでも、おしゃれなカフェと並んでレトロな喫茶店の写真が上がっているのを目にしませんか。もちろん昔から続いているものもあれば、新たに懐かしさをコンセプトとして開業するカフェもあります。モラスキー先生の講義は、そうした私たちの記憶の中に残る懐かしさの再生が、私たちの中の「何」を再生しようとしているのか、3.11以降復興を目指すお店を事例に考える機会を与えてくれます。

 2009年度学術俯瞰講義「歴史とは何か」から三谷博先生の「21世紀初頭の歴史認識論争」

https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_777/

 最後は視野をぐんと広げて、歴史と記憶に関わる講義です。先ほども述べたように、人の記憶はなんともいい加減です。しかし歴史的に、私たちはそうした記憶の上に立って歩んできました。そこには、もちろん記憶の食い違いが世界的な不和をもたらすこともありました。三谷先生はそうした記憶の齟齬がどのように利用されてきたのか明らかにする一方で、曖昧な記憶を前提とした歴史はいかに紡がれていくべきか、一つの見方を提示しています。